1)今年度は昨年度に引き続き、二世帯家族(三世代同居)も含めて調査を行った。
2)調査の方法
対象:
子育て層(18未満の子供がいる家庭)家族を調査対象とし、今後、エネルギー消費が増えたり、家族状況が変わっていく世帯のCO2排出実態を調査し、特徴を分析することによってその対策を探る。
モニター:
61世帯(ただし、データ有効モニターは56世帯)調査員:地球温暖化防止活動推進員等9名調査内容:エネルギー消費量、エコライフ意識調査、家電と設備の調査、住宅の省エネ度調査
すすめ方:
モニター募集(6〜8月)調査票の配布と説明:調査員がモニター家庭を訪問して、調査票を配布し説明を行う。
9月・・・エネルギー消費量と意識調査
10月・・・家電と機器の調査
1月・・・住宅の断熱性能調査と室内温度測定家電と設備調査:照明、エアコン、冷蔵庫、テレビ、給湯器、自動車等の仕様等住宅省エネ度調査:居間の温度(床上120cm)の変化と外気温の差によって住宅の断熱性能Q値の推測値を算定する。また、「住宅の省エネ性能の推定表」により調査。
1)これまでの家庭のCO2排出実態調査から、深夜電力契約家庭のCO2排出量が多くなっていることがわかり、今年度、深夜電力についての状況調査とミッドナイト節電の実験的取組を行った。
2)深夜電力アンケート調査
深夜電力機器の普及がすすむなかで(北陸電力地域深夜電力契約率26.5%)、これらの機器は運転が自動であることから、節電に取り組むことが可能なのか、節電効果が期待できるのかをアンケート調査した。
調査月:2016年7月調査方法:福井県内(福井市、坂井市、鯖江市)スーパーマーケット店頭や福井市内イベント会場での聞き取り調査(深夜電力契約者だけに依頼)
回答数:270人
3)ミッドナイト節電チャレンジ
アンケート回答者から節電チャレンジャーを募り、取組後、報告書と検針票を送付。節電チャレンジャーは、深夜電力機器の状況(設定など)を確認して、節電チャレンジ項目を決め取り組む(2016年12月)。
節電チャレンジャー:11軒(内報告書集計軒数10軒)
1世帯あたりの平均エネルギー消費量は以下のようになり、平均世帯人数は4.18人(昨年4.13人)、年間CO2排出量は7,735kg(昨年8,404kg)であった。昨年と比べると、電気や深夜電力は微増で、太陽光発電が2.5倍程度(設置世帯が12軒、21%)に伸び、ガスは3割程度落ちている。
エネルギー別のCO2排出量は、ガソリン、深夜電力、通常電気の順となった。これら3つで95.3%となっている。この調査は、子育て層が対象となっており、電気への依存度が高いことがわかる。また、深夜電力契約が39軒(69.6%)あり、その中で蓄熱暖房の家庭が12軒(21.4%)のため、冬期の深夜電力消費が大きくなっている。今年の調査では太陽光発電売電量も大きくなって、構成比グラフから外して円グラフにした。CO2排出量の分析は、昨年と同様に5つの類型別に行った。
1人当たりCO2排出量では、「エコキュート」が一番少なく、「集合住宅」は、ガソリンによるCO2が大きく、「一戸建て・非オール電化」よりも多くなった。
「集合住宅」が世帯当たりのCO排出量が少ないのは今回の世帯人数が少ないことが要因であるが、本来、エネルギー効率は良いはずである。1人当たりCO2排出量が少なくないのはガソリンが他世帯と変わりないためであり、家族3人でも2台の自動車が必要な福井の特徴である。今回調査の「一戸建て・非オール電化」は電気消費量が多い傾向となっている。また、「エコキュート」「蓄暖」は昨年より電気と深夜電力の消費量が少ない傾向となっており、太陽光発電によるCO2削減も影響している。太陽光発電を設置した場合、売電量の1/2程度を自家消費しているので、その分、昼間の電気消費量が少なくなる。
「電気温水器」は、夏冬ともに深夜電力が大きくなって年間1人当たりCO2排出量を押し上げている。「蓄熱」は、冬期の深夜電力が大きくなっているが、全世帯がエコキュートのため夏期は少なくなっている。
家庭内のCO2排出量として自動車燃料以外を合計すると前ページの表になる。左のグラフで月別の推移を見ると、「電気温水器」は1年中一番多くなっているのに対して、「蓄暖」は冬期は多いが夏期は少ない。
用途別消費熱量を省エネルギーセンター「家庭の省エネ診断」に基づいて算出すると、給湯で「電気温水器」、暖房で「蓄暖」が他より飛びぬけて多くなっている。このことは昨年も同じ結果となっており、ムダなエネルギーを使っていることにならないだろうか。「エコキュート」「蓄暖」の電灯・家電が少ないのは太陽光発電の自家消費によることも考えられる。
エコキュートはエネルギー効率が電気温水器の3倍あると言われている。今回の調査では、「エコキュート」の深夜電力は「電気温水器」に比べて少なくなって、40%にとどまっている。また、給湯の消費熱量も45%にとどまっていることから、1/3にはならないが半分以上のCO2排出量削減につなげることができることを示している。
エコキュートはエネルギー効率が電気温水器の3倍あると言われている。今回の調査では、「エコキュート」の深夜電力は「電気温水器」に比べて少なくなって、40%にとどまっている。また、給湯の消費熱量も45%にとどまっていることから、1/3にはならないが半分以上のCO2排出量削減につなげることができることを示している。
住宅の断熱性能を省エネルギーセンター作成の「住宅の省エネ性能の推定表」に基づき算定し、太陽光発電家庭を除き、「電気+深夜電力+ガス+灯油」によるCO2排出量との相関関係を見たが、散布図から明らかなように断熱性能が良くてもCO2排出量は必ずしも少なくはない結果となった。機器の使い方や暮らし方によるところが大きいのだが、住宅の省エネ化が26%削減実現の大きな対策となっている以上、もっと要因分析を行う必要がある。
左のグラフは、エコキュート家庭18軒の内5軒が太陽光発電を設置している設置していない家庭の自動車燃料以外の1人当たりCO2排出量を家族人数毎の平均でグラフにした。太陽光発電設置家庭はCO2排出量が少ないことがわかる。
今回の調査では、省エネルギーセンター「家庭の省エネ診断」に基づき照明機器の状況調査を行っている、LEDへの切り替えがどの程度進んでいるかを集約した。集約方法は、各部屋の主照明と補助照明がLED・蛍光灯・白熱電球のどれを使っているかを調べて、標準W数と標準点灯時間からLED比率等を算出した。比率の結果は下の表の通りで、全体のLED比率は19.3%であった。標準点灯時間から試算すると、LEDに切替えることによって、照明の30%(1世帯あたり211kWh)が削減できることになる。1世帯当たりの年間CO2削減量は122kgとなる。
昨年度、総務省の「2015年家計調査年報」から県庁所在地の中で福井市が電気使用量全国一であることを報告した。今回はさらにCO2排出量等を算出して10年間の推移を見た。
まず、以下の6市の2005年と2015年の1人当たりCO2排出量、消費熱量を比較した。家計調査年報では都市ガスの購入数量がわからず支出金額だけなので6市それぞれの消費量20m3の金額から単価を算出して購入数量を計算した。その結果、福井市は、10年間で熱量は15.4%削減できているがCO2排出量は2%の削減にとどまっている。また、富山市、金沢市よりCO2排出量が少ないが新潟市より多くなっている。
そして、電気と[ガス+灯油]の消費熱量の推移は2007年から逆転し、電気がどんどん多くなって、[ガス+灯油]は減少が激しくなっている。従って、熱量の消費が電気に替わりながら消費熱量は削減できているのに対し、CO2は削減幅が少ないと言える(グラフ19)。その他、2011年と2012年は原発事故の影響で電気が下がり、[ガス+灯油]が増えている。
深夜電力とその他電力の10年間の伸びのグラフは、確かに深夜電力(主に給湯に使われる)も伸びているが、それ以上にその他電力が急激に伸びており深夜電力以外で使われる電気が10年間で24%の伸びを示している。
それでは、電気製品やエコキュートなどがどのように買われているのかを調べるために、家計調査年報で設備器具(給湯機器など)と家庭用耐久財(電気製品が中心)の支出金額を調べた。給湯機器が含まれる設備器具の支出額は10年間で70%以上伸びている。これはエコキュートの普及が考えられる。電気製品が中心の家庭用耐久財の中で冷蔵庫とエアコンは伸びており、省エネ型への買い替え需要も影響していると思われる。それ以外の伸びが電気消費量の伸びに関係しているのかと考えて推移を見た。2009年までは25,000〜30,000円と大きな金額になっているが、それ以降は減少している。家電エコポイント制度が2009〜2010年度実施だから省エネ家電購入にシフトしているとも言える。ただ色々な電気製品が購入され、電気消費量が増えていると言えるのではないか。
福井県は深夜電力契約の家庭が多いことから、昨年に引き続き深夜電力に関するアンケート調査を行い、深夜電力の節電チャレンジに取り組んだ。今年度は、スーパーマーケット調査を鯖江市や坂井市に広げ、さらにイベント会場でもアンケート調査を実施した。
深夜電力契約の家庭でエコキュートは71%を占め、その内67%(130人)が6年以内の設置となっている。一方、電気温水器を6年以内に設置した人も11人で電気の給湯器の7.8%が省エネ型以外を設置していることになる。
エコキュート家庭16,200円電気温水器家庭16,201円今回のアンケートでは、エコキュートは消費電力が少ないにもかかわらず電気料金の差は検証できなかった。CO2実態調査では明らかに差が出ている。(4ページ参照)
蓄熱暖房機家庭:23,948円
それ以外の家庭:16,360円
蓄熱暖房器家庭は、それ以外の家庭に比べて平均46%冬の電気料金が高くなっていた。
ミッドナイト節電に取り組んだモニターで検針票が届いた人は10名で、その内5名が昨年よりも電気使用量が下がっていた。下表は、下がった家庭の取り組み内容とその結果である。
・蓄暖が思いのほか電気量が増すことを知った。夜間電力は減ったが、朝・昼が増えていたので気をつけたい。
・2日に1回のお湯はりの場合、湯量少なめにすると、浴槽にお湯をはる時、即、沸き上げになるのでお湯はりの時だけ、深夜沸き上げにしておく必要があった。
・深夜電力は安いので、節電の必要性を強く感じない。
・深夜電力の節電に関心が高くなったという意見が多く、確かに電気料金は安いが、深夜電力の節電にも目を向ける必要がある。
・蓄熱暖房器の節電チャレンジは成果が出たと思われるし、節電方法も単純なことからさらに啓発することが重要である。
・給湯器では節電できなかった人もあり、その家庭の使い方など状況に応じた設定方法を考えることや、エコキュートに向く使い方を明らかにすることが必要である。
「家庭のCO2排出実態調査」は、子育て家族を中心に家庭のCO2排出実態を調べることによって、福井県のエネルギー消費やCO2排出の特徴を捕まえて、CO2排出量削減をどのようにすすめていくことが重要かを示すためにスタートした。今回は、昨年度までの分析の傾向がそのまま当てはまるのかを検証しつつ、さらに家計調査年報の分析を行ってその特徴を掘り下げることを試みた。以下は、今回の調査でわかったことをまとめる。
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