「うちエコ診断」の資格を有する診断士が、家庭の年間エネルギー使用量や光熱費などの情報をもとに、専用ソフトを用いて、その土地の気候や受診家庭のライフスタイルに合わせて無理なくできる省CO2・省エネ対策を提案する事業で、以下の4点を柱としています。
福井県地球温暖化防止活動推進センターでは、実践的な省エネ行動への転換を促すために、昨年度に引き続き、「うちエコ診断」を100世帯に実施しました。これに対し、事後調査票送付件数は85件、このうち50件の返却があり、返却率は58.8%でした。調査票の返却のない方には、事後調査票を再送しています。
事後調査票の返却のあった世帯50世帯のCO2排出削減量は、86781.4825kg/年(86.4t)で、1世帯当たり平均1735.62965kg/年(1.73t)でした。
登録しているうちエコ診断士に対してフォローアップ研修会を開催し、7名のうち6名が参加しました。平成29年度の診断実施予定を説明するとともに、診断実施における諸注意を再確認しました。また、診断スキルの向上を目的に、家庭エコ診断制度運営事務局(一般社団法人地球温暖化防止全国ネット)の川原博満氏を招き、うちエコ診断士の診断スキルアップ、新うちエコ診断ソフトについて講義を行いました。
10/22,11/3・4は荒天となり、あまり診断実施ができませんでしえたが、他のイベントでは20名/日もの診断ができた日もあり、ソフトの操作など、フォローアップ研修の成果が見られました。
インターネットが使用可能な受診者に対しては、家庭エコ診断制度ポータルサイトの受診申込ページをご案内しました。一方、ウェブ環境が十分にない方や入力方法等がわからない方に対しては、用紙での申し込みを受付け、診断実施機関にて代行入力を行いました。
平成29年度診断実施期間中(平成29年4月〜平成30年2月)において、受診者から個人情報及び消費者トラブルに関する苦情はありませんでした。
報告書はこちら
福井県地球温暖化防止活動推進センター
(NPO法人 エコプランふくい)
日本の総人口は、総務省および国立社会保障・人口問題研究所によると、2008年の1億2,808万人をピークに減少しており、本格的な人口減少・少子高齢化社会が到来していることがわかる(図1.1)。
福井県内の市町の2010年と2040年の人口増減数においても、増田の報告(表1.1)の通り、大幅な人口減少が見込まれており、高齢化の進行、人口密度の減少、交通弱者の増大等に備えた新たな交通政策、都市政策が急務であることがわかる。
国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、以下IPCCという)によって、第5次評価報告書統合報告書(IPCC2014)が公表され、各国の地球温暖化対策の取り組みがより一層求められている。また、2015年12月には、気候変動枠組条約締約国パリ会議(COP21)で世界の195か国とEUが「パリ協定」を採択し、世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2°C未満に抑えるとともに、1.5°Cに抑える努力を追求することを世界共通の目標として合意した。
国立環境研究所によると、家庭部門の二酸化炭素排出量は1990年度に11.2%であったが、2015年度には14.6%、2016年度の速報値では14.7%と約3.5%増加している(図2.1)。一方、運輸部門(自動車・船舶等)については、17.4%から18.3%とほとんど変化がみられず、2016年度の速報値でも17.6%となっている。これに対し、2015年度の家庭(一世帯当たり)におけるCO2排出量の割合をみると、自家乗用車から排出される割合が28.6%となっており(図2.2)、家庭のCO2排出要因のうち自動車の占める割合が高いことがわかる。
自動車検査登録情報協会の資料によると、福井県は1世帯当たりの乗用車保有台数が1.749台であり全国1位(表2.1)、県民1人当たりの乗用車保有台数は7位である。さらに、福井県地球温暖化防止活動推進センターが平成25年度から平成28年度に実施した家庭のCO2排出実態調査では、ガソリン使用によるCO2排出の割合が高いことがわかっている。
本調査は、福井県民の自家用車利用実態とそれにともなう課題の抽出、および今後の可能性について明ら かにすることを目的として実施する。アンケートを用い以下の 3 点を中心に調査し、自動車による CO2 の 削減方策、自動車からの転換方策、社会的気運の醸成の必要性等について検討する。
1どのような状況において、どの程度利用しているか。 2公共交通や自転車等への転換を促すためには、何が決め手となるか。 3将来の世代と地球温暖化を見据えた上で、交通対策についてどのような考えを持っているか。
本調査の実施においては、調査用紙の設計、調査の実施、集計・分析等の一連の作業について、以下の研究機関に業務委託し、内容や実施について協議しながら連携して行った。
委託先:福井工業大学工学部 建築土木工学科 交通計画研究室 代表 吉村朋矩氏
①年代・職業・送迎が必要な家族の有無
回答者の年代、職業、送迎が必要な家族の有無について図4.1に示す。
年代では、40代が26.4%と最も高く、30代が22.2%と続いている。非高齢者と高齢者の割合は、非高齢者(18歳-64歳)が77.8%であり、高齢者(65歳以上)が22.2%であった。このうち、前期高齢者(65歳-74歳)の割合は13.4%、後期高齢者(75歳以上)が8.8%を占めた。
職業は、自営業が7.9%、被雇用が56.8%であり、これらの98.9%は非高齢者であった。また、学生は4.0%占めた。無職は21.2%であり、そのうち84.7%が高齢者であった。
送迎の必要な家族がいる割合は38.9%であり、父親や母親の通院や買い物の送迎、子どもの幼稚園、保育園、習い事などの送迎が多く見受けられた。また、配偶者のための送迎や孫の学校までの送迎といった記述もあった。これらの代替手段としては、少数の記述であったが、バスや自転車、タクシー、子どもの友人の保護者の送迎があげられていた。
②自宅から鉄道駅・バス停までの距離
自宅から鉄道駅までの距離を表4.1に、バス停までの距離を表4.2に示す。また、参考として、バスサービスハンドブック(土木学会編)による「抵抗を感じない距離帯」について表4.3に示す。あわせて、自宅から最寄の鉄道駅・バス停までの距離別の割合について図4.2に示す。抵抗を感じない距離帯の割合や鉄道・バスの利用圏の割合に着目されたい。
自宅から鉄道駅までの距離について、90%の人が抵抗なしであるとしている距離の割合に着目すると、非高齢者における300m以内の割合は20.3%であり、高齢者における100m以内の割合は7.8%であった。バス停までの距離については、非高齢者が71.5%、高齢者は28.3%であった。一方、国土交通省が利用圏として示している距離帯は、一般的、鉄道駅から500m圏域、バス停から 300m 圏域である。この距離に着目する と、鉄道駅まで 500m 以内の距離の割合は全体で 35.1%であり、バス停まで 300m 以内の割合は全体で 73.0% であることが明らかとなった。
鉄道駅までの距離と鉄道の利用頻度について図 4.3 に示す。利用しない割合に着目すると、500m 以上の距離帯で 80.8%、150m〜200m の距離帯で 72.7%である。一方、100m 以下の距離帯では週 1 回以上利用して いる割合が 29.4%と他の距離帯に比べて高い。次に、自宅からバス停までの距離とバスの利用頻度につい て図 4.4 に示す。利用しない割合に着目すると、150m〜200m の距離帯では 95.5%、300m〜500m の距離帯で 88.9%であった。
以上のことから、鉄道の場合は、100m 以内において週 1 以上の利用率がやや高いが、それ以外について は、利用圏(鉄道:500m 圏内、バス:300m 圏内)であっても利用率が低いことが明らかとなった。したが って、利用のインセンティブとして、距離のメリットはあまり働かないと考えられる。
主に利用する自家用車の種類について図4.5に示す。非高齢者、高齢者ともに同様の傾向を示しており、ガソリン車の所有率は非高齢者が83.6%、高齢者が84.6%と最も高いことがわかった。ついで、ハイブリッド車が非高齢者11.3%、高齢者11.5%であり、ディーゼル車や電気自動車、水素自動車等の燃料電池車については非常に低い、または0%であった。
自家用車の使用頻度と1日の平均走行距離について図4.6に示す。毎日利用している割合が全体として高いことがわかる。5km未満では66.7%に留まっているものの、その他の距離では79.5%から86.7%となっており、自動車が日常生活で不可欠な存在であることが明らかとなった。
各種交通手段(自動車・鉄道・バス・鉄道)の利用目的について図4.7に示す。人の活動には通勤や通学
といった日常的に固定化された活動と買い物や娯楽など自由度の高い活動がある。これらの目的別に、各種交通手段で差異がみられるかどうかに着目すると、自動車の利用目的は通勤が64.8%、買い物が63.2%と高い割合であった。一方、送迎は26.8%、郵便局等は21.8%であった。これに対し、娯楽については自動車に比べて、鉄道が56.8%、バスが51.9%と高い割合を示した。また、買い物目的で利用する交通手段として、自動車についで自転車が51.9%であることがわかった。
①福井県における乗用車台数の全国順位の認知度
福井県の世帯当たり乗用車保有台数が全国1位、県民1人当たりの乗用車保有台数が7位であることに関する認知度を図4.8に示す。全体で36.6%であり、60歳以上は46.2%から47.8%と他の年代に比べて高い。しかし、半数には満たず、認知度が高いとはいえない。
全国順位に関する自由記述を見ると、「CO2の排出量が多く環境によくない」「公共交通を充実させて車の使用頻度を減らすべき」等の意見は少数派で、「公共交通が不便であるため仕方がない」「車がないと暮らしていけない」「地域的に仕方がない」「年寄りにとっては車がないと不便である」など現状を「やむを得ない」と考える意見が圧倒的多数を占めた。一方、「賛成」「いいと思う」「当然のことだと思う」「妥当だと思う」「ルールを守って運転すれば良いと思う」「仕事をする人が多いので必要」といった賛同意見や「自宅に駐車スペースが十分確保できる」「女性の社会進出の表れだと思う」等の意見も複数みられた。
②自動車抑制の意識
「環境問題や交通渋滞の解決、公共交通の維持等から自動車を抑制する必要があると考えるか」については、表4.5、図4.9の通りであった。「抑制する必要がある・実行したい・社会としても努力すべき」と回答した割合は、高齢者で46.4%、非高齢者で30.1%、全体平均で33.5%であり、3割強の人がこの考え方を支持していることがわかった。特に高齢者は5割近い人が指示している。
一方、「社会として努力すべきだが自分は難しい」「必要はあるが自分も社会も難しい」と回答した割合は、非高齢者・高齢者いずれも3割程度となっているが、非高齢者の割合がやや高く、社会としては努力すべきでも自分の実行が難しいことを示している。さらに、「必要ない」との回答は、非高齢者で1割近くに上っており、高齢者の1.8%に対して多い。以上のことから、必要性には賛同するが、自分の実行や社会の努力は困難であるとする割合は、非高齢者に高い傾向にあり、必要ないとの回答も含めると、非高齢者の方が、自動車の抑制に対して消極的であることがわかる。
③自動車のCO2排出量減少に向けた行動意識
CO2排出量減少に向けた個人の行動意識を図4.10に示す。「徒歩・自転車圏内であれば自動車利用を控える」という割合は全体の51.4%であり、約5割にとどまっていることがわかる。これは非高齢者・高齢者ともに同様の傾向を示している。一方、「公共交通の利用」は全体で32.7%であり、高齢者の約4割に対して非高齢者は約3割にとどまっている。「エコドライブの実践」はどちらも約3割を示している。「低燃費車・ハイブリッド車」は非高齢者の割合が高く、「電気自動車・燃料電池車」は高齢者の割合が高い。
以上のことから、徒歩や自転車が可能な範囲であっても自動車を抑制したいと考える割合は5割にとどまっており、車の利便性に慣れたライフスタイルや行動習慣を垣間見ることができる。一方、公共交通の利用は、高齢者の方が積極的である。その要因を特定することはできないが、時間的余裕や高齢者ドライバーの事故の多発などいくつかの背景を推察することができる。
次に、自動車の1日平均走行距離別にみたCO2排出量減少に向けた個人の行動意識を図4.11に示す。「徒歩・自転車圏内であれば自動車利用を控える」という割合は、自動車の1日平均走行距離が5km未満の距離帯で62.7%と最も高い。「公共交通の利用」は、5km-10km未満が42.6%と他の距離帯に比べ高いが、50km以上が38.5%、5km未満が33.9%と大差はなく、公共交通の利用は、自動車利用の距離とあまり関係がないことがわかった。
世界的には、500mから5km以下の都市内移動において、自転車が他の交通手段に比べて時間的にも有利とされていることから、徒歩や自転車で移動する環境が向上することによって、5km未満の移動を徒歩や自転車に変更しやすい可能性があり、脱クルマ社会に向けた効果が期待できる。一方、公共交通の利便性向上やニーズに合った運営方法、公共交通と他交通手段との連携強化、スーパーサイクルハイウェイのような自転車専用道路が整備されることによって、クルマに頼らず徒歩や自転車、公共交通で移動できる都市の創造、生活の質の向上が期待できる。
その他、「エコドライブの実践」は、28.8%(5km未満)から46.2%(50km以上)であり、長距離の方が、実践意欲が高いことがわかった。「低燃費車やハイブリッド車」についても、25.4%(5km未満)から44.4%(20km〜50km未満)であり、距離が長い方が、意欲が高いことがわかる。
④環境問題・交通問題に関する意識
環境問題・交通問題への意識について図4.12に示す。1〜10は表4.6の設問項目の番号に対応している。
「とても思う」「ある程度思う」の割合に着目すると、「4交通問題は個人の選択だけではなく、社会全体で取り組むべき問題である。」が94.8%と最も高く、「1自動車利用によるCO2排出は、地球温暖化問題にとって重大である。」が93.7%と続いている。これに対し、「6バス優先ルート・専用車線が有効に利用されるなら、車通勤者は我慢すべき。」(55.3%)、「8CO2排出を抑制するためなら、利便性よりも環境を重視した交通手段を選びたい。」(62.2%)など他に比べるとやや低い割合の項目もみられた。
ここで、問題意識が高いことがうかがえる1および4を目的変数、その他の項目を説明変数として、それぞれ重回帰分析を行い要因解析し、1と4に対する重要な変数(項目)を導いた。4を目的変数とした重回帰分析による問題意識モデル集計結果を表4.7に示し、1を目的変数としたモデル集計結果を表4.8に示す。まず、4についてみると、「3全国有数の車社会である福井県の特性をふまえ、積極的な対策を講じるべき。」と「5公共交通への補助金や建設・維持管理費への援助は、社会的に妥当な施策である。」が1%有意で重要な説明変数として抽出された。次に1では、「2将来の世代や地球環境を重視するならば、緊急な対策が必要である。」と「8CO2排出を抑制するためなら、利便性よりも環境を重視した交通手段を選びたい。」が1%有意で重要な説明変数として抽出された。
⑤公共交通や自転車への転換の決め手となるもの
自動車から公共交通に転換するために有効な条件を図4.13に示す。最も期待される項目は「ダイヤ・運行ルート」で全体の6割が支持している。この割合は、高齢者よりも非高齢者に高く、通勤等で時間的な効率や利便性が重視される現役世代にこの傾向が強い可能性があることが推察される。ついで「運賃」「最寄駅やバス停までの距離」があげられているが、非高齢者にこの傾向が強く、通勤等の利便性や毎日利用する上での費用なども影響している可能性が考えられる。
次に、前途した環境・交通問題に関する意識の9および10において、「とても思う」「まあまあ思う」と回答した人が自動車から公共交通や自転車に転換するための有効な条件として挙げた項目を図4.14および図4.15に示す。まず、公共交通への利用・転換に有効な条件として、ダイヤや運行ルートが61.9%と最も高く、運賃が40.6%、最寄駅・バス停までの距離が34.7%と他の項目に比べ高いことが明らかとなった。これらの傾向は、図4.13の分析と同様の結果を示しており、9、10に限定されるものではないことがわかった。
次に、自転車への利用・転換に有効な条件として、通行空間の整備と連続性(自転車通行空間のネットワーク化)が51.5%と最も高く、駐輪場の安全性が26.2%と他の項目に比べ高いことが明らかとなった。また、公共交通への容易な積載が20.9%であるとともに、鉄道駅やバス停における駐輪場整備が16.5%から18.4%であり、コミュニティサイクルの普及の10.7%より高いことがわかった。これらのことから、コミュニティサイクルでの移動よりもマイチャリでの移動かつ公共交通との連携を望む傾向にあることが推察される。
①自主返納の予定
運転免許の自主返納に関する高齢者の意識について図4.16に示す。「当分の間、返納しない」という割合は70.0%であった。一方、現在悩んでいる割合が6.0%、具体的に検討している割合が24.0%であった。約4人に1人が具体的に返納を検討しているが、7割は当分の間、返納予定がない結果となった。
②自主返納の理由
運転免許の自主返納理由について図4.17に示す。最も高い割合を占めたのは、「高齢者事故の多発」であった。ついで、「視力や判断力など身体の衰えを感じ始めた」といった身体的衰えが40.0%、「運転に自信がなくなった」が26.7%であった。「公共交通等の優遇が受けられる」は13.3%、「家族からの勧め」と「実際にブレーキとアクセルを間違う、車をぶつけるなど問題が発生した」は6.7%であり、自動車の車検が切れるタイミングでの自主返納は0%であった。
③希望する自主返納後のサービス
運転免許の自主返納後に高齢者が望む支援・サービスを表4.9に示す。乗合タクシーやコミュニティバス、タクシーの割引などの移動支援が53.3%と最も高く、鉄道や路線バス等の公共交通機関の発達が44.4%、移動販売や宅配サービス等の買い物支援が42.2%を占めた。割引制度などの情報提供については6.7%であった。
車の必要性について送迎の観点からみると、送迎の必要な家族がいる割合が38.9%、自動車利用の目的として送迎をあげた人が26.8%であった。具体的には、父親や母親の通院、買い物の送迎、子どもの幼稚園、保育園、習い事の送迎が多く見受けられ、配偶者のための送迎、孫の学校の送迎といった記述もあった。
世帯あたり自動車保有台数の全国順位に関する意見では、「車がないと生活できない」「車がないと年寄りにとっては不便」「高齢者が多く公共交通が発達していないのでやむを得ない」等の考えが示され、送迎の必要性が車利用につながっていることがわかる。
しかしながら、送迎の代替手段としてバスや自転車、タクシー、子どもの友人の保護者の送迎等があげられており、工夫の余地があると考えられる。
自動車保有台数の全国順位が高いことに関する認知度は、全体平均で36.6%、60歳以上では46.2%から47.8%と他の年代に比べて高いこと明らかとなった。しかし、半数には及ばず、県民の認識として高いとはいえないことがわかった。
全国順位に関する自由記述をさらに分析すると、「土地柄仕方がない」「公共交通が十分でない為、いたしかたない」「車社会からの脱却は困難、インフラ整備が困難」「郊外にショッピングセンター等があるので仕方がない事だと思う」「人口が少なく公共交通の維持が困難な地域なので仕方ない」「町の作りの問題なので仕方ない」など「やむを得ない」とする考え方が圧倒的に多く、「賛成」「良いと思う」「居住地の環境、家族環境をふまえると妥当だと思う」「家から街まで距離があるので当然の事と考えている」等も含めると多数の回答者が「仕方がない」「妥当である」「良いことである」と考えていることがわかった。
しかしながら、「ちょっと多いと思う」「CO2の排出量が多く環境によくない」「車ばかりを使って、他の交通手段を使うことに気がつかないのは残念」「公共交通機関を充実させて、車の使用頻度を減らすべき」等の意見も見られ、車社会に対する問題意識の存在も明らかとなり、今後、CO2排出抑制に向けた県民意識をどのように喚起していくかが課題と考えられる。
国土交通省が利用圏として用いる距離帯は、鉄道駅から500m、バス停から300mであるが、本調査では、鉄道駅まで500m以内に居住する割合は全体で35.1%、バス停まで300m以内は全体で73.0%であった。これを利用頻度との関係で分析すると、鉄道では100m以内の居住者において週1以上の利用率がやや高いが、それ以外については、利用圏(鉄道:500m圏内、バス:300m圏内)であっても利用率が低いことが
明らかとなった。従って、利用のインセンティブとして、距離のメリットはあまり働かないと考えられる。以上のことから、公共交通への転換の決め手として、駅や停留所までの距離は、有利な条件となりにくい
と推察され、インセンティブをあげていくには、他の条件を充実していくことが重要であると考えられる。
「環境問題や交通渋滞の解決、公共交通の維持等から自動車を抑制する必要があると考えるか」との問いに対して、「抑制する必要がある・実行したい・社会としても努力すべき」と回答した割合は、高齢者で46.4%、非高齢者で30.1%、全体平均で33.5%であり、3割強の人が支持していることがわかった。
一方、「社会として努力すべきだが自分は難しい「」必要はあるが自分も社会も難しい」と回答した割合は、高齢者・非高齢者いずれも3割程度であり、非高齢者の割合がやや高いことがわかった。さらに、「必要ない」との回答は、非高齢者で1割近くに上っており、高齢者の1.8%に対して多い。
以上のことから、「必要性には賛同するが、自分の実行や社会の努力は困難である」「必要ない」とする割合は、非高齢者に高い傾向にあり、非高齢者の方が、自動車の抑制に対して消極的であることがわかる。しかしながら、「抑制する必要があり、自分も実行したい、社会としても努力すべき」と考えている人が3割強存在することに注目すべきであり、社会的気運を醸成するとともに、具体的な実行策の提示や支援のための社会環境を整備することが重要であると考えられる。これらにより、「自分では難しい」「社会的にも難しい」と考える層をも巻き込んでいく可能性が存在すると考えられる。
「徒歩・自転車圏内であれば自動車利用を控える」割合は全体の51.4%であり、約5割にとどまっている。これは非高齢者・高齢者ともに同様の傾向を示している。一方、「公共交通の利用」は全体で32.7%であり、高齢者の約4割に対して非高齢者は約3割にとどまっている。
以上のことから、徒歩や自転車が可能な範囲であっても自動車を抑制したいと考える割合は5割にとどまり、車の利便性に慣れたライフスタイルや行動習慣をどのように変えていけるかが課題であることがわかる。公共交通の利用意識は、高齢者の方が積極的である。その要因を特定することはできないが、時間的余裕や高齢者ドライバーの事故の多発などいくつかの背景を推察することができる。非高齢者・高齢者ともに、公共交通の利用促進を図っていくためには、これらの要素をふまえた啓発や環境整備が重要であると考えられる。
一方、行動意識を自動車の1日平均走行距離別にみると、「徒歩・自転車圏内であれば自動車利用を控える」という割合は、自動車の1日平均走行距離が5km未満の距離帯で62.7%と最も高いことがわかった。世界的には、500mから5km以下の都市内移動において、自転車が他の交通手段に比べて時間的にも有利とされていることから、徒歩や自転車で移動する環境が向上することによって、5km未満の移動を徒歩や自転車に変更しやすい可能性があり、脱クルマ社会に向けた効果が期待できることから、利用距離の短い層を対象とした重点的な働きかけが重要であると考えらえる。
一方、公共交通については、利便性向上やニーズに合った運営方法、公共交通と他交通手段との連携強化、スーパーサイクルハイウェイのような自転車専用道路が整備されることによって、クルマに頼らず徒歩や自転車、公共交通で移動できる都市の創造、生活の質の向上が期待できる。
以上の他、「エコドライブの実践」は、28.8%(5km未満)から46.2%(50km以上)であり、長距離の方が、実践意欲が高いことがわかった。「低燃費車やハイブリッド車」についても、25.4%(5km未満)から44.4%(20km〜50km未満)であり、距離が長い方が、意欲が高い。したがって、長距離利用者層に対して、エコドライブの講習を行うなどターゲットを明確にした重点的な対策が重要であると考えられる。
自動車から公共交通に転換するための条件として最も期待される項目は「ダイヤ・運行ルート」で、全体の6割であった。この割合は、高齢者よりも非高齢者に高く、通勤等で時間的な効率や利便性が重視される現役世代にこの傾向が強い可能性があることが推察される。
自転車の利用・転換に有効な条件としては、「通行空間の整備と連続性(自転車通行空間のネットワーク化)」が51.5%と最も高いことがわかった。「駐輪場の安全性」が26.2%、「公共交通への容易な積載」が20.9%、「鉄道駅やバス停への駐輪場整備」が16.5%から18.4%であり、移動の安全性、利便性、および公共交通との連携を望む傾向があることがわかった。
以上のことから、公共交通や自転車への転換を促していくためには、効率よく利用できる環境(ダイヤ・運行ルート)、安全性と利便性(自転車通行空間のネットワーク)、公共交通と自転車との連携体制(駐輪場の整備、電車への積載等)が重要であると考えられる。
環境問題・交通問題について1〜10それぞれの傾向を見ると、支持率に差はあるが、多くが8〜9割に達しており、全項目において5割を超えていることは大きく評価できる。特に、「4交通問題は個人の選択だけではなく、社会全体で取り組むべき問題である」が94.8%、「1自動車利用によるCO2排出は、地球温暖化問題にとって重大である」が93.7%と極めて高く、ついで、「9公共交通の利便性が向上すれば、積極的に公共交通を利用したい。」「2将来の世代や地球環境を重視するならば、緊急な対策が必要である。」「5公共交通への補助金や建設・維持管理費への援助は、社会的に妥当な施策である。」など、いずれも9割に近い支持率を示している。
そして、1および4について、重回帰分析を行い要因解析した結果、1と4に対する重要な変数(項目)が導かれた。4を目的変数とした重回帰分析では、「3全国有数の車社会である福井県の特性をふまえ、積極的な対策を講じるべき。」「5公共交通への補助金や建設・維持管理費への援助は、社会的に妥当な施策である。」が重要な説明変数として抽出され、1では、「2将来の世代や地球環境を重視するならば、緊急な対策が必要である。」「8CO2排出を抑制するためなら、利便性よりも環境を重視した交通手段を選びたい。」が重要な説明変数として抽出された。
このことは、交通問題は社会全体で取り組むべきであり、そのために全国有数の車社会である本県の特徴をふまえた積極的な対策をとる必要があること、公共交通への財政的な援助を行うことも社会的に妥当であること、一方、自動車によるCO2排出は地球温暖化にとって重大であり、将来の世代や地球環境のために緊急な対策が必要であること、CO2排出を抑制するためなら利便性よりも環境を重視した交通手段を選ぶ意志があることを意味している。
以上のことから、県民は、自動車利用によるCO2排出と地球温暖化問題、将来の世代への影響などを認識するとともに、これらの解決のために、個人および社会全体として取り組むべきであること、また、全国有数の車社会である本県の特徴をふまえた積極的な対策をとるべきであり、そのためには、公共交通への財政的な援助を含めた支援、利用のための環境整備が重要であること、そして、これらの充実が図られれば、積極的に利用したいと考えているといえる。
したがって、こうした県民意識を捉え、具体的な施策に結びつけるとともに、県全体の社会問題として、より多くの県民がこれらの問題に触れ、認知し、行動変革や公的な財政負担への賛同などへとつなげていくことのできる方策を講じていくことが重要であると考えられる。
運転免許の自主返納については、4人に1人が具体的に返納を検討していることがわかった。その理由は、「高齢者事故の多発」が最も多く、「視力や判断力など身体の衰えを感じ始めた」といった身体的衰えや「運転に自信がなくなった」が続く。「実際にブレーキとアクセルを間違う、車をぶつけるなど問題が発生した」人は6.7%みられ、返納の重要性、必要性が迫っていることがうかがえる。返納を促進する方法として、乗合タクシーやコミュニティバス、タクシーの割引などの移動支援を望む声が最も高く、鉄道や路線バスなど公共交通機関の発達、移動販売や宅配サービス等の買い物支援が続いた。
以上のことから、自主返納を検討している高齢者が少なくないことから、返納後の移動を支援する具体的な制度やサービスをさらに充実していくとともに、これらの情報を広く高齢者に周知し、返納にあたってのアドバイスや家族も含めた相談体制等の支援が重要であると考えられる。特に、本県が全国有数の車社会であることについて、高齢者の生活不便や家族の送迎の問題などが指摘されていたことから、こうした問題の解決を地域ごとの特徴をふまえて推進していくことが重要であると考えられる。さらに、7割は当分の間返納する予定がないと答えているが、実際に事故が発生したり、家族が返納を勧めたりしている状況を鑑みると、返納後のサービスや相談体制を充実させることで、安心して返納できる環境を提供することが重要である。
本県が全国有数の車社会であることから、CO2排出による地球温暖化への影響が懸念される中、県民は、人口密度の低さにより公共交通が発達しづらいことや高齢化等による送迎の必要性など様々な要因から「やむを得ない」と考える傾向が大変強く、さらに、自動車交通の発達は「良いことである」「妥当である」とする意見もみられた。実際に、通勤や通学、通院、その他の様々な場面で車が不可欠であることは事実である。特に、非高齢者層は、通勤等の利便性から車の利用が重要視されている。しかしながら、一方で、自動車利用による地球温暖化への影響や将来の世代にもたらす影響について回答者の9割以上が支持を表明しており、1本県の特性をふまえた積極的な対策が重要であること、2個人の選択だけでなく社会全体の問題として扱うべきであることなど、9割近い支持が示されている。そして、公共交通への財政支援等の重要性、公共交通や自転車が使いやすい環境になれば積極的に利用したいことなどが示されている。
したがって、上述した通り、こうした県民意識を捉え、具体的な施策に結びつけるとともに、県全体の社会問題として、より多くの県民がこれらの話題に触れ、認知し、例えば近距離は徒歩や自転車を選ぶ、エコドライブを実践する等の行動変革や公共交通への公的な財政負担への賛同などへとつなげていくことが重要である。
また、今後ますます進む人口減少と人口密度の低下は、都市インフラの整備・維持負担を増していくことは必至であり、コンパクトシティ化など都市計画と一体となった政策も重要である。さらに、一層高齢化が進む中で、交通弱者や高齢者ドライバーの事故が増えることを回避する必要があり、公共交通の充実とともに、運転免許自主返納を促進するための制度やサービスの充実、周知・相談等も含めた諸施策が急務といえる。
県民は、全国有数の車社会であることを「仕方がない」としつつも、地球レベルの環境問題やローカルレベルの交通問題について、解決をめざすための問題意識を強く持っていることがわかった。より多くの県民にこうした事柄を周知し、自動車利用抑制の意識を醸成していくことが重要である。そして、1県民ができること、2行政が行うべきこと、3民間事業者が努力することについて対話を重ね、具体的な前進をめざすことが期待される。
本調査は、平成29年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(地域における地球温暖化防止活動促進事業、根拠法:地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)をもとに実施しました。調査を実施するにあたり、福井工業大学工学部建築土木工学科交通計画研究室(代表吉村朋矩氏)に委託し、調査用紙の設計、調査の実施、集計・分析等の一連の作業において、協議しながらともに作業を進めてきました。ここに、記して謝意を表します。また、アンケート調査の実施にあたり、実施場所として各公民館、福井街角放送、環境フェア等のイベント会場、商工会議所、研修会や出前講座の主催者など多くの関係機関、関係者の方々にお世話になりました。そして、アンケートの回答にご協力いただいた県民の方々にも大変お世話になりました。あわせてここに記し、厚くお礼申し上げます。
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福井県地球温暖化防止活動推進センター
(NPO法人エコプランふくい)
H29年度の派遣は全29件で、目標25件を上回りました。派遣先は、小学校が15件、学童クラブ等の恒常的な場が9件、単発募集の企画が4件、大人対象が1件でした。なお、小学校は、授業の一環として実施されたものとPTAや地域と一体となった行事等に分かれます。
派遣エリアは、嶺北が中心となっており、福井市が13件と最も多く、ついで坂井市とあわら市が4件、越前市、勝山市などが続きます。嶺南は、おおい町の1件のみで、派遣依頼が大変少ない状況です。
講座内容は、自然エネルギー教室のソーラーUFOが9件と最も多く、ストップ!温暖化講座が8件、絵本・紙芝居が7件となっています。今年の傾向としては、地球温暖化の現状と課題、今後について基礎知識から行動変容を促すワークまで一貫して学ぶことのできるストップ!温暖化講座が増加傾向にあり、小学校の授業としての派遣依頼が増えたことが特徴です。
3年生以上が対象のソーラーUFO、風車発電、炭焼き教室など自然エネルギー教室は、夏休みの行事や放課後活動に実施されることが多く、4年生以上のストップ!温暖化講座は、小学校の授業として実施されることが多くなっています。特に、総合学習や理科・社会の学習と関連づけて実施される傾向にあります。一方、低学年向けの絵本・紙芝居は、学童クラブ等からの派遣依頼が多く、自然エネルギー教室同様、夏休みの実施が多い傾向にあります。
なお、派遣講師は、研修を受けて知識とスキルを身につけたアースサポーターが原則2名の組み合わせで対応しています。2名で実施することで、互いの得手不得手を補い合い、高め合うだけでなく、プログラムの時間管理の徹底、終了後の反省点の共有などをめざしています。
また、派遣先では、学校教諭、児童館等の指導員、PTA関係者、行事の開催関係者、地域のボランティアなど様々な人々から、学習サポートをいただいています。
講座終了後に、講師と主催者それぞれに提出していただく報告書では、「1.打合せ・講座の趣旨・達成目標の共有化・準備物の確認」「2.参加者の主体的学び(プログラムの工夫・対話・教材の活用)」「3.これからの行動意識(地球温暖化防止に貢献したいと感じられたか)」の3項目について評価を実施しています。
それぞれの評価結果は図4〜6の通りで、横軸の1〜29は派遣番号です。これを見ると、講師、主催者双方の評価の類似、相違などがわかります。図7は、図4〜6の全体平均を抜粋し、図式化したものです。全体として、「打合せ」の評価は高く、講座の趣旨や準備物、役割分担等の打ち合わせが十分行われていることがわかります。これに対し、「参加者の学び」「これからの行動意識」がやや低い傾向を示しており、自由記述の文章からも、実際の講座での反省点や改善点がうかがえるとともに、これからの行動にどこまでつながるかという点で課題が残されていることがわかります。
派遣回数が多かった自然エネルギー教室のソーラーUFO、ストップ!温暖化講座、絵本・紙芝居の3つについて特徴を比較することで課題を抽出します。
まず、主催者の評価を見ると、「打ち合わせ」については3講座とも類似しており高い傾向にありますが、「参加者の学び」「これからの行動意識」の評価は、ソーラーUFOで低い傾向を示し、特に、「これからの行動意識」については3.5ポイントとなっています。講師の評価でも、「これからの行動意識」の評価が低く、「参加者の主体的学び」の評価に比べても低い結果となっています。
絵本・紙芝居では、「参加者の主体的学び」「これからの行動意識」ともに講師の評価が低くなっており、それぞれ3.4ポイント、3.3ポイントでした。しかしながら、これらに関する主催者評価が高いことが特徴です。
一方、ストップ!温暖化講座では、「これからの行動意識」に関して、講師、主催者いずれの評価も高く、特に、講師の評価が他の2講座や全体平均に比べて高いことが特徴となっています。
以上のことは、図11〜12からも読み取ることができ、ストップ!温暖化講座は、「参加者の学び」「これからの行動意識」について講師、主催者ともに評価が高い一方、ソーラーUFOでは特に「これからの行動意識」について講師、主催者ともに低いことが確認できます。絵本・紙芝居は、これら2項目について、講師の評価が低い一方で、主催者の評価が高いことが特徴です。
1)ソーラーUFO等の自然エネルギー教室
上記の背景や原因を自由記述より分析すると、ソーラーUFO等の自然エネルギー教室では、1地球温暖化について考えるよりも工作が主催者の主たる目的になっている場合があること、2限られた時間の中で細かい工作指導をしなければならないため、じっくりと温暖化について扱う余裕が少ないこと、3対象外の低学年が混ざる場合があり、工作指導や温暖化の説明が難しいこと、4夏休みの活動や課外活動が多く、じっくりと考え意見を言う授業と違って、楽しく体験することが優先されていることなどが考えられます。また、「温暖化に関する話の難易度がやや高かった」「話が少し長かった」といった主催者側の意見もありました。
しかしながら、講師の記述からは、限られたプログラムの中で参加者と対話をして意見を引き出しながら努力している様子がわかり、「いろいろな場面で子どもたちに質問して答えを導いていた」「子どもたちの質問に丁寧に答えていた」等の主催者の感想からも、そのことがうかがえます。
講師の反省点としては、「ソーラーUFOと温暖化対策との関係についてもっと丁寧に説明した方がよい」という意見もあげられています。また、主催者からは、「時間に余裕があったので、温暖化防止に向けたこれからの具体的な行動について、こども白書の絵を見ながらもっと解説があってもよかった」「一方的な話になっていた」といった意見も出されました。
自然エネルギー教室は、自然エネルギーについて学ぶことを主眼としており、温暖化の理解や「これからの行動意識」につながりにくい傾向を示していることから、温暖化に関する対話の充実、工作と温暖化防止の関係性についての論理展開、これからできることについて考える時間の確保、対象学年についての主催者の理解促進など改善が期待されます。
2)絵本・紙芝居
低学年対象の絵本・紙芝居では、「参加者の主体的学び」「これからの行動意識」の主催者評価が高いにも関わらず講師の評価が低くなっています。その原因を分析すると、低学年に対して地球温暖化の理解や問題意識をもたらすことの難しさ、これからの行動につなげていくことの難しさ、集中力の持続性などに関する記述が見受けられました。また、夏休みや学校のふりかえ休日の活動の中での開放感なども要因と推察できます。さらに、低学年にはワークシートやふりかえりシートの記述が難しかった様子もうかがえます。
一方、登場人物になりきった絵本の演出、絵本だけでなく動画・ワークシート・模型・ぬいぐるみ等を用いた様々な場面展開、講師の手づくりの教材やプレゼント、低学年の子どもたちに接する丁寧な対話など、主催者の評価は高く、講師の努力が伝わった様子が推察できます。
講師の「やらされている感じより自発的に行動できるよう、楽しさや明るさ、声のトーンなどに気をつけた」「子どもたちともっと関係性を作ることができるとよかった」等の意見も今後参考になると考えられます。また、「特に1年生は書くことに時間がかかるため、時間設定が少し短かったのでは」「終了後でもがんばって書こうとする子もいました」等の主催者の意見も、プログラムを検討する上で重要と考えられます。
絵本・紙芝居は、低学年向けの貴重な講座です。わかりやすい教材を使うことで、低学年から温暖化問題に触れることのできる機会となります。学校での高学年の授業と違って、知識を正確に伝えたり、意見を出し合ったり、文章でまとめることは難しいと思われるため、低学年の興味や感受性に合わせた教材を用いながら、ゆったりした時間の中で感じ、考える体験を提供することがこれからも期待されます。ただし、1年生と3年生の学力差は大きく、3年生では論理的思考力、表現力、発表力なども成長してきます。対象学年に合ったプログラムを組むことでより効果的な結果が導き出されると考えられます。
今年度は、1年〜6年の混合の講座もありました。縦割りで上級生がリーダーシップをとりながら充実した時間を過ごした様子がわかり、対象者に合わせた組み立ての工夫が伝わってきました。
3)ストップ!温暖化講座
ストップ!温暖化講座は、総合学習、理科や社会など学校の授業との関連で派遣依頼が行われることが多く、事前学習をしている場合や出前講座をもとに次の学習に進むなど、一貫した流れに位置づけられることが少なくありません。担当教諭が特定の目的や授業テーマを持たれていることもあり、意向に沿った出前講座が期待されています。
このような背景の下、事前打ち合わせで、講師と主催者が相談することで、授業の位置づけ、特に重視してほしいポイントなどを確認している様子が打合せシートから伝わってきます。そして、本講座は、温暖化の現状と課題、今後についてなど温暖化防止に向けて総合的に扱う最もベーシックかつ深まりを持たせることができる講座であるため、プログラムや教材も工夫しやすく、副読本も活用でき、ふりかえりシートもしっかり書くことができるなど効果につながりやすい講座となっています。
そのため、活発なグループワークや積極的な意見発表も多く、ふりかえりシートにも、具体的な感想や意見が多数表現され、今後の行動につながる内容が書かれてあり、成果が明確です。学校によっては、その後の取り組みとして夏休みに家庭で実践することをホームワークにしたり、行政との連携で節電コンテストにつなげたりする例もあり、家庭での実践に直結する充実した講座となっています。
しかし、プログラムや教材が盛りだくさんで、もう少しじっくりと考える時間があるとよいという意見も若干みられ、与えられた時間の中で、詰め込み過ぎず、落ち着いて取り組める流れを工夫する余地が残されています。
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